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エリート精子をつくる前に、知っておくべきこと
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OVERVIEW
この節の目的
「エリート精子をつくる」と聞くと、何を食べてもらう? 何をやめてもらう? と、男性側の生活習慣が気になるかもしれません。
もちろん、それもこの章で詳しく扱います。
でも、その前に知っておいてほしいことがあります。精子は、射精されたあと、ただ一直線に卵子へ向かうわけではありません。
この節では、まず精子が卵子と出会うまでの道のりから見ていきましょう。
01
良い精子をつくれば、
それでいい?
「エリート精子のつくり方」
そう聞くと、 まず知りたくなるのは、
夫に何を食べてもらう?
何をやめてもらう?
どんな生活に変えてもらう?
ということかもしれません。
もちろん、 具体的な生活習慣は この章でしっかり学びます。
でも、その前に 知っておいてほしいことがあります。
精子だけ整えても、妊娠は完成しない
良い精子を育てる。
これはもちろん大切です。
でも妊娠には、 精子だけでなく、
卵子。
子宮。
ホルモン。
そして、 精子と卵子が出会うまでの 身体の環境も関わります。
妊娠は、 「良い精子さえあれば成立する」 という単純な仕組みではありません。
だから、 精子をどう育てるかを学ぶ前に、
まずは その精子がどんな旅をするのか を知っておきましょう。
02
精子が越えていく、
「関所」
私たちはつい、
射精された精子が 卵子に向かって泳ぎ、 一番早く着いた精子が受精する。
そんなシンプルなイメージを 持ちがちです。
でも実際には、 精子が卵子までたどり着く道のりには、 いくつもの条件があります。
受精までの道を、大きく見る
① 膣
射精された精子が
最初に入る場所。
② 子宮頸管
排卵期になると、
精子が進みやすい性状の
頸管粘液が増えます。
③ 子宮
精子は子宮内を通って
卵管へ向かいます。
④ 卵管
自然妊娠では、
主にこの場所で
卵子と精子が出会います。
⑤ 卵子
精子は卵子を取り巻く構造を越え、
最終的に一つの精子が
卵子と融合します。
射精時には 非常に多くの精子が含まれていますが、 卵子の近くまでたどり着く精子は そのごく一部です。
精子の旅は、
「速く泳げば勝ち」ではない。
03
「迎え入れる側」にも、
条件がある
ここで大切なのは、 精子だけを見ないことです。
精子が進む場所は、 すべて女性の身体の中にあります。
たとえば、子宮頸管粘液
子宮頸管粘液は、 月経周期によって 性状が変化します。
排卵期には、 エストロゲンの影響を受けて 透明で伸びやすくなり、 精子が通りやすい状態になります。
これは、 自分でも気づくことのできる 排卵期のサインの一つです。
さらに、 受精したあとには 子宮内膜の状態や ホルモンの働きなど、 また別の条件が関わります。
妊娠では、 どこか一か所だけが 完璧ならよいわけではありません。
精子をつくる側と、 それを迎える側。
両方がつながって 一つの流れになります。
「迎える身体」を、自分責めに使わない
この話は、 「女性の身体が悪いから妊娠しない」 という意味ではありません。
妊娠が成立しない理由は 一つではなく、 原因が特定できないこともあります。
誰かの責任を探すためではなく、 妊娠がどれほど多くの条件の上に 成り立っているのかを知る。
そのための視点です。
04
治療で越えられる場所、
身体が担う場所
ここまでの話を聞いて、
「私は体外受精だから、 精子がここを泳ぐ話は 関係ないのでは?」
と思った方もいるでしょう。
確かに、 生殖補助医療には、 自然妊娠のいくつかの過程を 医学的に補助できる大きな力があります。
医療が補助できること
人工授精では、 洗浄・濃縮した精子を 子宮内へ届けます。
体外受精では、 採取した卵子と精子を 体外で受精させます。
顕微授精では、 一つの精子を選び、 卵子の中へ注入します。
医療だからこそ 補助できる過程があります。
一方で、 受精した胚がその後どう発育するか、 子宮内膜との相互作用がどう進むかなど、 妊娠成立には さらに多くの生物学的な過程があります。
だからこそ、
医療を受けているから 身体づくりは関係ない
と切り離して考える必要はありません。
第4章でも学んだように、 医療と毎日の身体づくりは 役割の異なる二つの軸です。
05
なぜ彼は、
「自分ごと」にしにくいのか
ここからは、 少し身体の仕組みを離れて、 パートナーとの話をします。
「私ばかり頑張っている」
「どうしてもっと 自分ごとにしてくれないの?」
そんな気持ちになったことが ある方もいるかもしれません。
でも、 女性と男性では、 妊娠について考えてきた 身体的な経験の量が そもそも違います。
女性は、身体で「周期」を経験してきた
初潮以降、 女性は月経を繰り返します。
排卵があり、 ホルモンが変化し、 生理が来る。
毎月、 自分の身体で その変化を体験しています。
一方、 男性には月経も排卵もありません。
同じ「妊娠」という言葉を聞いていても、 身体を通して得てきた実感には 大きな差があるのです。
だから、 「理解していない=愛情がない」 と結論づける必要はありません。
まず、 知らないことを知ってもらう。
精子はどうつくられるのか。
排卵とは何なのか。
なぜ妊娠には時間的な要素があるのか。
解像度を少しずつ 揃えていくことも、 二人の妊活の一部です。
06
妊活を「作業」にしないために
妊娠を強く望むほど、 SEXが
「排卵日にするもの」
「今日しなければならないもの」
へ変わってしまうことがあります。
タイミングを考えること自体は、 妊娠を望むうえで 必要なことです。
でも、 パートナーとの営みまで すべて「タスク」になると、 二人とも苦しくなります。
立場を入れ替えて、想像してみる
「今日はこの時間に」
「どうしてできないの?」
「私はこんなに頑張っているのに」
そう言われ続けながら、 身体だけを機能させることを 求められたとしたら。
きっと、 誰でも苦しくなるでしょう。
男性にも、 性的な反応には 心理状態や二人の関係性が関わります。
もちろん、 だから女性だけが 我慢すればいいわけではありません。
男性側も、 女性が月経・検査・治療などで 抱えている負担を 知る必要があります。
どちらか一方が 理解するのではなく、
お互いが、 相手には見えていない世界を 少しずつ知っていく。
そこから始めます。
責めるのではなく、知る。
戦うのではなく、味方になる。
第5章で目指すのは、 パートナーを 思いどおりに管理することではありません。
二人ともが、 自分でできることを理解し、 少しずつ参加できる状態を つくることです。
そして次の002では、 受精の場面を さらに詳しく見ていきます。
一度に放たれる 非常に多くの精子。
なぜ、 それほどの数が必要なのか。
そして、 卵子と精子が出会う最後の場面で 何が起きているのか。
「あなたの卵子に選ばれる エリート精子」 とは何なのかを 見ていきましょう。
SUMMARY