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妊娠力の教科書

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妊娠力の教科書

CHAPTER 05

第5章 > 002

あなたの卵子に選ばれるエリート精子

あなたの卵子に選ばれるエリート精子

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OVERVIEW

この節の目的

一度の射精で放たれる精子は、とても多くの数にのぼります。

では、これだけたくさんいれば、どれか一つは卵子にたどり着いて受精できるのでしょうか。

実際には、数だけではありません。精子は女性の身体の中を進み、卵子を取り巻く構造を越え、最後に一つの精子だけが卵子と融合します。

この節では、「エリート精子」とは単に数が多い、速く泳ぐという意味ではないこと、そして精子は日々の生活によって少しずつつくられていくことを整理していきましょう。

01

なぜ、精子は
こんなに多いのか

一度の射精では、 とても多くの精子が 女性の身体の中へ送り出されます。

それだけ聞くと、

「こんなにたくさんいるなら、 どれか一つくらい 卵子に届きそう」

と思うかもしれません。

でも、 前の節で見たように、 精子が卵子へたどり着くまでには 長い道のりがあります。

数が必要なのには、理由がある

膣を通る。

子宮頸管を通る。

子宮から卵管へ進む。

そして、 ようやく卵子の近くまで たどり着く。

出発した精子の大部分は、 その途中で失われます。

そして、 卵子の近くまで 到達すれば終わりでもありません。

卵子は、 いくつもの構造に 包まれているからです。

02

卵子は、
ただ待っているだけではない

卵子の周囲には、 卵丘細胞と呼ばれる 細胞の層があります。

さらに、 その内側には 透明帯という 卵子を包む構造があります。

精子は、 こうした構造と相互作用しながら 卵子へ近づいていきます。

精子は、化学的なシグナルにも反応する

精子は、 ただ闇雲に泳いでいるわけではありません。

卵子やその周囲から出る 化学的な物質に反応し、 泳ぐ方向が変わる 走化性という仕組みも 知られています。

卵子と精子の出会いは、 精子だけの一方通行ではなく、 両者の相互作用によって進みます。

だから、 「一番速い精子が勝つ」 という競争だけで 受精を説明することはできません。

03

最後に入れるのは、
たった一つ

多くの精子が 卵子の近くまで来たとしても、

最終的に卵子と融合する精子は 通常一つです。

一つの精子が 卵子と融合すると、

ほかの精子が さらに入ることを防ぐための 仕組みが働きます。

「卵子が選ぶ」という表現について

この教科書では、 この複雑な受精の過程を わかりやすく伝えるために、

「卵子が精子を選ぶ」

と表現しています。

実際の受精は、 精子と卵子の表面にある分子や、 卵子を取り巻く環境など、 複数の仕組みが重なって起こります。

卵子が人間のように 意志を持って 一匹を選んでいる、 という意味ではありませんので、 誤解しないようにお願いします。

でも、 卵子がただ受け身で 待っているだけではない。

そこは、 ぜひ覚えておいてください。

04

「エリート精子」とは、
何か

ここで、 この章で使っている 「エリート精子」 という言葉を はっきりさせておきましょう。

これは、 医学用語ではありません。

また、 単に

数が多い。

速く泳ぐ。

形が整っている。

それだけを意味する言葉でもありません。

この教科書でいう「エリート精子」

女性の身体の中を進み、

卵子の近くまでたどり着き、

卵子を取り巻く構造を越え、

最後に卵子と融合して 受精へ進んだ精子。

その一つを、 この教科書では 「エリート精子」と呼んでいます。

精液検査は、 男性の妊孕性を考えるうえで とても大切な検査です。

でも、 一枚の検査結果だけで 受精までのすべてを 説明できるわけではありません。

05

精子は、約2〜3か月かけて
つくられる

卵子と精子の 大きな違いの一つが、 つくられ方です。

男性の身体では、 思春期以降、 精子が継続的につくられています。

精子が精巣の中でつくられ、 その後成熟していくまでには、 およそ2〜3か月程度を 一つの目安として考えることができます。

今日の生活は、数か月後につながる

今日の食事。

今日の睡眠。

今日の喫煙や飲酒。

今日の運動。

今日どれくらい 精巣を熱にさらしたか。

今の生活を整えることは、 これからつくられる精子の環境を 整えることにつながります。

だから、 「精液検査の結果が悪かった」 という一回の数字だけで すべてを決める必要はありません。

必要な検査や治療を受けながら、 同時に 次の2〜3か月を どう過ごすかも考えていきます。

精子は、これからもつくられる。
だから、今日からできることがある。

06

検査の数字だけが、
彼のすべてではない

精液検査では、

精液量。

精子濃度。

運動率。

形態。

などを評価します。

これらは、 男性側の状態を知るための 大切な情報です。

でも、 精子について 医学的に評価できる項目は それだけではありません。

「数字が悪い=すべて悪い」ではない

精液検査の数値には、 ある程度の変動があります。

また、 必要に応じて 精子DNA断片化など、 さらに別の視点で評価されることもあります。

一つの数字だけで、 「自分はダメだ」 「彼の精子はダメだ」 と決めつけないこと。

大切なのは、 必要なときには 泌尿器科や男性不妊を扱う医療機関で きちんと評価してもらうこと。

そして、 医療で確認することと 日々の生活を見直すことを 両方進めることです。

台本では、 精子の状態と 性的な状況や感情との関係についても 触れています。

性的興奮や射精時の状況によって 精液の一部の指標に差がみられた研究はありますが、 それだけで精子の「良し悪し」を 決めることはできません。

ただし、 妊活が義務やプレッシャーだけになれば、 二人の関係にも 性生活にも影響します。

精子を整えることと、
二人の関係を守ること。
どちらも、妊活の一部。

そして次の003では、 少し視点を変えます。

精子はなぜ、 酸化ストレスの影響を 受けやすいのか。

食事や身体の状態が、 男性側のBijaに どうつながっているのか。

「愛しさと切なさと」 というタイトルから、 男性の身体そのものを もう一段深く見ていきましょう。

SUMMARY

この節のまとめ

  • 精子は数だけではなく、卵子へたどり着き受精へ進める力が大切です。
  • 受精は「一番速い精子が勝つ」だけではなく、卵子と精子の複雑な相互作用によって起こります。
  • 精液検査の数字は大切な情報ですが、それだけで精子のすべてを判断できるわけではありません。
  • 精子は約2〜3か月かけてつくられるため、今から生活を整えることは、これからの精子づくりにつながります。