妊娠力の教科書

PROLOGUE

ごあいさつ

はじめまして、神藤多喜子です

はじめまして。神藤多喜子です。助産師として命の現場に立ち続けて、50年が経ちました。 長いようで、あっという間でした。 この間、私は何千もの命の誕生に立ち会い、同時に、 「授かりたい」「産みたい」「でも、どうしたらいいのかわからない」 という思いを抱えた、たくさんの女性たちと向き合ってきました。

その中で、ずっと感じてきたことがあります。 妊娠は、ただ卵子と精子が出会えば終わり、というものではありません。 妊娠することだけがゴールでもありません。

命を迎え、その命をお腹の中で育み、産み、授乳し、育てていく。 そこまでを見たときに、本当に大切なのは、 「妊娠する方法」や「着床させること」だけではなく、 命を迎えられる心身の土台を整えることなのです。

病院でできることは、もちろんあります。 検査でわかることも、医療の力で助けられることもあります。 けれど、あなたの腸を整えること、血をつくること、 子宮や卵巣に滋養を届けること、冷えや巡りを整えること、 心が安心して受け入れられること、 つきつめると“もう一つの命を授かるだけの十分な余力”をつくること。

これは、医療や他人に任せるものではありません。 あなた自身の毎日の中で、少しずつ育てていくものです。

この教科書は、不妊治療を否定するものではありません。 けれど、治療だけにすべてを預ける前に、 あなた自身の身体にできることを、もう一度取り戻してほしい。 そのために作りました。

これは、単に「妊娠したい人」のための教科書ではありません。 “健康で幸せな妊娠”を望む人のための教科書です。

それは、妊娠中の過ごし方、出産、授乳、 そしてその後しばらく続く育児の土台にも深くつながっていきます。 だからこそ、今この瞬間から、命を迎える心身を整えることには意味があります。

いつか妊娠したい人も、今まさに妊活中の人も、治療と向き合っている人も。 すべての女性に知ってほしい、命を迎える心と身体づくりの教科書です。

本来、妊娠力を整えるには1年かかります

卵子の成熟サイクルは、一般的に約90日とされています。 けれど、ここで大切なのは、 「90日あれば卵子だけが変わる」という単純な話ではありません。

その卵子を育てるための血液は、きれいに巡っているか。 その血液をつくるための食事は、きちんと消化・吸収されているか。 子宮や卵巣に滋養が届く通り道は、詰まっていないか。 睡眠、排毒、冷え、ストレス、ホルモンのリズムは整っているか。

卵子だけを見ていても、妊娠力は育ちません。 卵子の背景には、血液があり、腸があり、巡りがあり、 心の状態があり、日々の暮らしがあります。 そして、そのすべてが整ってはじめて、活力がうまれ、 身体は「もう一つの命を迎える余力」を育てていきます。

だから、本当の意味で妊娠力を整えるには、ある程度の時間が必要です。 細胞の代謝、血液の質、ホルモンバランス、体質のバランスは、 今日決意したからといって、明日すべて入れ替わるものではありません。

どんなに努力しても、 「5倍速で細胞が入れ替わる」ことは、人間の身体には起きません。 それが自然の摂理です。

でも、これは絶望するための話ではありません。 むしろ逆です。 身体には、身体の変わる順番があります。 変わるための時間があります。 そして、その順番に沿って整えていけば、 身体と心は少しずつ応えてくれます。

1年かかるというのは、「遠すぎる未来」の話ではありません。

今日の食事、今日の睡眠、今日の排毒、 今日のおっぱい体操、今日の心の整え方。 その小さな積み重ねが、3ヶ月後の血液を変え、 半年後の卵子の質を支え、 1年後の妊娠力の土台になっていきます。

不妊症も妊娠力も、ある日突然つくられるものではありません。 毎日の選択による結果で起こるものです。

12週間で“習慣”をつくっていきましょう

妊娠力は、知識を得ただけでは変わりません。 大切なのは、その知識を、毎日の暮らしの中で続けられる形に変えることです。

何を食べるか。何を避けるか。 朝、何をするか。夜、どう眠るか。 身体をどう温めるか。おっぱい体操をどう続けるか。 排毒をどう習慣にするか。 焦りや不安が出てきたとき、どう自分の身体に戻ってくるか。

これらは、一度聞いただけで身につくものではありません。 最初は意識しなければできません。 忘れる日もあれば、面倒に感じる日もあるでしょう。 けれど、繰り返していくうちに、 少しずつ「特別な努力」ではなく、 いつもの自分の暮らしの一部として「習慣」になっていきます。

習慣化に関する研究では、 新しい行動が自動的にできるようになるまで平均66日かかると報告されています。 66日は、およそ9週間から10週間です。 もちろん、人によって、行動によって差はあります。

けれど、この研究が教えてくれる大切なことは、 大きな変化ではなく、小さな変化を一定期間繰り返すことです。

だから、この教科書は12週間で設計しています。

12週間は、身体がすべて完成する期間ではありません。 けれど、毎日の選択を変え、新しいリズムを身体に覚えさせ、 命を迎えるための習慣を生活の中に根づかせるには、 とても意味のある時間です。

最初の12週間で、 セルフチェックによって自分の現在地を知り、 排毒で器を整え、巡りを取り戻し、命の種を育て、 必要であればパートナーの精子の質まで視野に入れる。

そして1年を見据えた場合、 この先の9ヶ月をどう整えていくかを、自分で選べるようになる。

この12週間は、1年計画の基礎となり、 その後一生の宝となるでしょう。

焦りと不安の中、情報に振り回され、 一喜一憂しながら手探りで右往左往し続けるのか、 毎日ひとつずつ心身のための習慣を積み重ねる12週間では、 その後の9ヶ月がまったく変わります。

この教科書は、続けられる順番で、迷わず実践できるように、 最初の12週間を伴走するためのものです。

妊娠の先まで、あなたに残るもの

この教科書は、「妊娠を保証するもの」ではありません。 命は、誰かが完全にコントロールできるものではありません。 どれだけ整えても、どれだけ願っても、 妊娠を約束することは誰にもできません。

けれど、本書を通じてあなたが手にするものは、 妊娠の結果だけに左右されるものではありません。

自分の体質を知ること。 自分の身体が何を求めているのかを感じられるようになること。 排毒、食事、女性ホルモンの整え方、睡眠、巡り、心の整え方を、 日々の中で使えるようになること。 パートナーとの対話が変わること。

そして何より、 「私の身体は、私が整えていける」という感覚を知り、習得すること。

それは、妊娠前だけでなく、妊娠中、出産、授乳、産後、 そして更年期以降、一生にわたり、あなたを支える力になります。

妊娠はゴールではありません。 命を迎え、育み、産み、授乳し、 その先の人生を生きていくための始まりです。 この教科書で学ぶことは、そのすべてにつながっています。

実践すれば、あなたの心身は、必ず変わります。 焦らなくていい。 でも、何もしなくていいわけではありません。

今日から、一つずつ整えていきましょう。
命を迎えられる心と身体へ。
あなた自身が、自分を信じ、行動して未来を切り開いていけるようになります。

妊娠力の教科書の使い方

教科書と動画の関係

この教科書は、各動画と連動しています。 動画を見る前に該当ページを読むと内容が入りやすく、 動画を見た後に読み返すことで知識が定着します。 手元に置いて、繰り返し参照してください。

教科書と妊娠力セルフチェックツールの関係

この教科書は、「妊娠力セルフチェック」ツールと連動しています。 質問に答えることで、 あなたの生まれ持った体質と妊娠力の状態を、 6つの視点から数値化し、 どこを優先的に整えればよいかが見えてきます。

ツールをまだ使っていない方は、 ぜひ教科書を読み始める前に試してみてください。 自分の現在地がわかると、 この教科書の使い方がより具体的になります。

すでに結果をお持ちの方は、 各章を読み終えたタイミングで結果を見直してみると、 数値の意味がより深く理解できるでしょう。

今の自分を6つの方向から映し出し、 整える順番を決めるための“地図”です。

妊娠力セルフチェックをする

各章の「対応するセルフチェックのカテゴリ」欄について

各章のはじめに、 「対応するセルフチェックのカテゴリ」という欄があります。 これは、いま読んでいる章が、 妊娠力の指標となる「6つのカテゴリ」のうち どれと結びついているかを示す目印です。

章によって、一つのこともあれば、二つ並ぶこともあります。 ご自分の結果を手元に置いて、 「この章は、私のどこに関わる話なのか」を確かめながら読み進めていくと、 より一層自分の状態が読めてきます。

ただし、一つだけ、先にお伝えしておきたいことがあります。 6つのカテゴリは、別々の引き出しに分かれているわけではありません。

食べたものが血をつくり、その血が巡り、巡りが心を支え、 心の状態がまた身体に返ってくるように、 すべてがつながって、一つの身体をかたちづくっています。

ですから、各カテゴリが独立していて、 「ここだけを見ればいい」という意味ではありません。

「この章では、特にこの視点から見ていきます」 という道しるべだと思って観察してください。

妊娠力の教科書を使いこなすための「4つのポイント」

01

最初から完璧にやろうとしないで大丈夫です

よくわからないところが出てきたとしても、 そこにとどまらず一通り読んでみてください。 全体を把握した上で、 できることから一つずつ始めれば十分です。

02

最初の12週間は、予行演習です

最初の12週間は、 これから本格的にやって行くことの予行演習のような位置づけです。 今日やって明日結果が出るようなものばかりではありませんが、 点が線となり、線が面となり、 最終的に立体的になります。

03

身体の変化のスピードは、体質によって違います

身体の変化のスピードは、体質によって大きく違います。 体質に合ったことを実践することで、 同じ努力でもより着実に変化を引き出せます。 誰かと比べるのではなく、 昨日の自分と比べてみると気づきに繋がります。

04

気づきをメモしておきましょう

教科書を読んだ後の気づきや、 動画を見て感じたことをメモしておきましょう。

「今日は体が重かった」 「この言葉が刺さった」 「なんとなく不安だった」 そんな小さなことで構いません。

心と体は日々ゆらいでいます。 後から読み返したとき、 自分でも気づいていなかった変化が見えてきます。