01|体質と食事
「身体にいい食べ物」は、人によって違う
「身体にいいものを食べているのに、なぜか調子がよくならない」 そんなことはありませんか?
アーユルヴェーダでは、 食材そのものを一律に「良い・悪い」で分けるのではなく、 その人の体質や今の状態に、 その食べ物の性質が合っているかどうかを見ていきます。
そして、その大きな手がかりになるのが「味」です。
甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味。 アーユルヴェーダでは、この6つの味それぞれに、 ドーシャを増やしたり、落ち着かせたりする性質があると考えます。
食事の仕方で体質のアンバランスが改善できる。
02|6つの味
6つの味には、それぞれ「性質」がある
アーユルヴェーダでは、 味を単なる「おいしさ」ではなく、 身体と心に働きかける性質のひとつとして捉えます。
6つの味は、 甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味です。
滋養する・潤す・落ち着かせる
温める・刺激する・食欲を促す
潤いを保つ・やわらかくする
温める・刺激する・動かす・軽くする
軽くする・冷やす・乾かす
引き締める・冷やす・乾かす
この性質が、自分のドーシャの性質と重なると、 そのドーシャはさらに増えやすくなります。
反対に、自分に増えすぎている性質とは逆の性質を持つ味を取り入れることで、 バランスをとりやすくなります。
たとえばヴァータは、 冷たい・乾燥しやすい・軽い・動くという性質を持っています。
そこに、同じように冷やし、乾かし、軽くする苦味や渋味を重ねすぎると、 ヴァータの特徴がさらに強まりやすくなります。
一方、甘味のように潤し、重さを与え、落ち着かせる性質は、 ヴァータとは反対の性質を持つため、 バランスをとる助けになります。
「この食べ物は身体にいいか」ではなく、 「この味の性質は、今の私に何を増やし、何を落ち着かせるのか」 と考えてみましょう。
03|体質別・6味と食材の早見表
あなたの体質に合う味を見てみましょう
積極的に摂るとよい
日々の食事で安定的に摂るとよい
控えた方がよい
※「×」は、食べてはいけないという意味ではありません。
甘味
米、パン、牛乳、にんじん、はちみつ など
甘味は、ヴァータの心身の不安定さや、 ピッタの熱性を抑える味です。 一方、カパ体質の人が摂りすぎると、 肥満、不活発、心の鈍さ、眠気などにつながりやすいと考えます。
甘味には、滋養する・潤す・落ち着かせるような性質があります。 そのため、乾燥しやすく、軽く、動きやすいヴァータにとっては、 甘味の「重さ」や「潤い」がバランスをとる助けになります。
ここでいう甘味は、お菓子や砂糖ではありません。 自然の甘味のことです。 例えば、米やパン、牛乳、にんじんなど、 日々の食事の中にある甘味を指します。
また、はちみつは甘味でありながら、 カパを増やしすぎず、バランスをとる甘味として考えられています。
酸味
酢、梅干し、レモン、トマト、チーズ、ヨーグルト など
酸味は、ピッタとカパを増やし、ヴァータを減少させる味です。 脳の働きを活発にし、消化を促す一方、 摂りすぎると、皮膚の炎症や胸焼け、潰瘍などにつながったり、 嫉妬心や怒りといった感情を抱きやすくなると考えます。
酸味には、温める・刺激する・食欲を引き出すような性質があります。 冷えやすく、消化のリズムも不安定になりやすいヴァータにとって、 この温かさと刺激は身体の働きを後押しする方向に働きます。
一方、もともと熱の性質を持つピッタに酸味を重ねすぎると、 熱をさらに強めやすくなります。 カパも、酸味を摂りすぎると重さや湿り気を増やしやすいため、 控えめに考えます。
酢やレモンも「身体によさそうだから」と 必要以上に摂ればよいものではありません。 適度な酸味を、日々の食事の中で取り入れましょう。
塩味
塩、しょうゆ、みそ、漬物、海藻 など
塩味は、ピッタとカパを増やし、ヴァータを減少させる味です。 食欲を増進させ、身体の中に水分をとどめる働きがある一方、 摂りすぎると、肥満や皮膚の炎症などにつながりやすいと考えます。
塩味には、潤いを保つ・食べ物の味を引き出す・ 身体をやわらかくするような性質があります。
乾燥しやすいヴァータにとって、 適度な塩味は潤いを補う方向に働きます。 一方、水分や重さを抱えやすいカパ、 熱を持ちやすいピッタは、摂りすぎないことが大切です。
塩を避けることではなく、 濃い味を習慣にしないこと。 また、精製された塩(塩化ナトリウム)は、 摂らないように気をつけましょう。
辛味
玉ねぎ、にんにく、しょうが、大根、スパイシーな料理 など
辛味は、ヴァータとピッタを増やし、カパを減らす味です。 身体を温め、代謝を高める方向に働きますが、 摂りすぎると、のどの渇きや痛み、目まいなどにつながったり、 興奮を強めやすいと考えます。
辛味には、温める・刺激する・動かす・軽くするような性質があります。
重く、動きがゆっくりで、滞りやすいカパにとっては、 この「動かす」「軽くする」という性質が バランスをとる助けになります。
一方、ヴァータはもともと動きが強く、 ピッタは火の性質を持っています。 しょうがやスパイスも、身体に良いからと 多く摂ればよいわけではありません。
苦味
緑葉野菜、レモンの皮、にがうり、ターメリック、炭酸水 など
苦味は、ヴァータを増やす性質が強く、 ピッタとカパを減少させる味です。 甘味・酸味・辛味の食べ物への欲求を抑える働きがあり、 消化が遅いカパ体質には、積極的に取り入れたい味です。
一方、摂りすぎると、 皮膚の乾燥や頭痛などにつながりやすいと考えます。
苦味には、軽い・冷やす・乾かすような性質があります。 熱を持ちやすいピッタには「冷やす」方向に、 重く湿りやすいカパには「軽く、乾かす」方向に働きます。
反対にヴァータは、もともと軽い・冷たい・乾燥しやすい性質を持っています。 例えば「にがうりは健康にいい」と聞いて、 ヴァータ体質の人がそれをたくさん摂りすぎてしまうと、 かえってヴァータの質を強めてしまうことがあります。
身体によいと言われる食材でも、 体質や摂り方によっては、 同じ性質を重ねすぎることがあるのです。
渋味
豆類、りんご、レタス、アブラナ科の野菜、緑茶 など
渋味は、ヴァータを増やし、 ピッタとカパを減少させる味です。 身体を冷やし、興奮を鎮める方向に働きますが、 摂りすぎると、便秘や腸内ガス、不安感、恐怖心などを 増幅させやすいと考えます。
渋味には、引き締める・冷やす・乾かすような性質があります。
渋いものを口にしたときに、 口の中の水分がキュッと引くような感覚があります。 あの感覚を思い浮かべると、 「乾かして引き締める」という性質が分かりやすいです。
この性質は、 熱が強くなりやすいピッタや、 湿り・重さが増えやすいカパにはバランスをとる方向に働きます。 一方、乾燥しやすいヴァータでは、 摂りすぎると乾燥や軽さをさらに強めやすくなります。
積極的に摂るとよい
日々の食事で安定的に摂るとよい
控えた方がよい
04|味のバランス
「×」は、食べてはいけないという意味ではありません
この早見表は、 「◎だからたくさん食べる」 「×だから食べてはいけない」 というものではありません。
アーユルヴェーダでは、 自分の体質や今の状態に合わせて、 増えすぎている性質は控え、 必要な性質を補いながらバランスをとっていきます。
また、どの食材も「摂れば摂るほどよい」というものではありません。 大切なのは、まず食材の質。 そして、質のよいものを日々の食事の中で適量とることです。
質のよいものを、日々の食事の中で、適量。
好きなものまで、全部やめなくていい
「×」は、その味を摂りすぎると そのドーシャの性質を強めやすいため、 「控えめに」という目安です。
自分の体質にはあまり合わない味でも、 それが大好きで、 食べることで心が満たされるのであれば、 すべて我慢する必要はありません。
毎日の習慣として大量に摂るのではなく、 嗜好品として、ときどき楽しむ。 量を控えたり、ほかの味や食材と組み合わせたり、 調理法を工夫したりして、 ドーシャを亢進させすぎないようにバランスをとることもできます。
食事は、身体を整えるためだけのものではなく、 心を満たすものでもあります。
好きなものを楽しみながら、 自分に合った食べ方を知り、 自分でバランスをとれるようになる。 そこまで含めて、アーユルヴェーダの食事の知恵です。